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あしあとふたつ

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パンおばさんと「サンタの手紙」

パンおばさんの森もすっかり冬に埋め尽くされて、とっても寒いです。

でも、今日もパンおばさんは朝からパンを焼き物置小屋のお掃除です。

「あらあらあらあら・・・・」おばさん、何かを見つけたようですよ。

今日は雪も深くて、さすがに子供たちはこない様子。

だから、パンおばさんのお話は、こっそりこっそりの独り言。

その手には、物置小屋で見つけたほこりだらけの箱が大事そうに載せられていました。

ふふふ。昔昔の手紙がたくさん見つかったわ。はじめてもらったラブレター。田舎のおばあちゃんからのも。今じゃ私がおばあちゃんなのね。

そして・・・そしてこれは・・・そうね。これには特別な物語があったんだわ。ふふふ。

それは、古い古い1通の手紙・・・。

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ずっと昔の冬の朝、木箱のポストに1通の白い手紙が届いていました。

手紙には、こんなことが書いてありました。

『心優しい娘さんへ。

この世界の心優しい誰かのために、

  • 茶色い熊のぬいぐるみ
  • 白い猫のぬいぐるみ
  • ピンクのうさぎのぬいぐるみ

そしてもしも時間がありましたら、私のためにあたたかい白いマフラーと手袋を作っていただけませんか?

次に雪の降る日の夜、受け取りに行きます。

サンタクロース』

差出人は『サンタクロース』とあり、娘はとても不思議に思ったけれど、作ってあげることにしました。

実は娘はこの村一番の器用者、どんなものでも上手に作ることができると評判でした。

それから娘は毎日せっせせっせとぬいぐるみを作りました。

「次に雪の降る日」っていつのことだか分かりません。明日かもしれません。

だから娘はいそいで作りました。

やがてぬいぐるみが出来上がり、それから急いでサンタさんのためのマフラーと手袋を編み始めました。

がんばって編んだので、とうとう後は右の手袋だけとなりました。

ところが、どういうわけか「ケーキを作って」とか「ジャムを作って」とか「ドレス縫って」など、たくさんの注文が娘のところへ来るようになったのです。

すっかり忙しくなった娘は、なかなか右の手袋を作る時間が取れませんでした。

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そんなある日、夜遅くにドレスを仕上げた娘はぐっすり眠ってしまいました。

そして次に娘が目覚めたのは、もうお昼もすっかり過ぎた頃でした。

「まあ、どうしましょう」

なんと外には雪がちらちら、灰色の空から次々と降ってくるではありませんか。

娘はいそいで右の手袋を編み始めました。

夕方になって外がどんどん暗くなってきても、娘は編み続けましたが、まだ出来上がりません。

やがて空は雪明りに照らされた蒼い夜になりました。とてもとても静かな夜でした。

と、どこからかちりんちりんと鈴の音が聞こえてきます。

「なにかしら」娘が窓から見ると、雪の空からたくさんのトナカイに引かれたそりが娘のほうへ向かってきます。

「まあ、本当にサンタさんなの?」

そりは娘の家の前に静かに止まり、そりからはサンタクロースが降りてきました。

サンタクロースは娘に深々とお辞儀をして、こう言いました。

「心やさしい娘さん。お忙しいときにたくさんの頼みごとをしてしまって、申し訳ありませんでした。」

娘はにっこりと笑って、「あのお手紙は本当にサンタさんが書いたんですね。」と言いました。

「ええ、どうしてもぬいぐるみが3つ、用意できなくて。あなたがとても上手に作ると、どこかで聞いたことがあったもので。マフラーと手袋は私ので、申しわけなかったね。」とサンタクロースは娘にウィンクをしました。

「いいんですよ。ぬいぐるみとマフラーは出来上がっています。でも、手袋は左手しかできていなくて。右手はあと少しでできます。」と娘は困ったように言いました。

見ると、右手の小指がまだできてませんでした。

「ふぉふぉふぉ!かまわないよ、娘さん。本当にご親切にありがとう。助かりました。」とサンタクロースは笑って言いました。

サンタクロースは「では、急いでいるので」とぬいぐるみ3つを大きな袋に入れて、マフラーを自分の首に巻き、右手の小指がまだない手袋をはめて、そりに乗りました。

「またいつか続きを編んでもらいにきますよ。」と言って、サンタクロースを乗せたトナカイのそりは、ふわっと夜空に浮かび上がり、雪の空へと消えていきました。

後に残った娘は、「今夜はクリスマスイヴだったのね。忙しくってすっかり忘れていたわ。」

とつぶやきました。

「この次は、きっと手袋を仕上げてあげますね、サンタさん。」

その冬以来、毎年クリスマスが近づくと娘はポストをのぞいてしまうのです。

サンタクロースからの手紙が、入っていないかしらと思って。

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「はい、今日の独り言はおしまい。」

そういえばもうすぐクリスマスね。サンタクロースは今でも小指のない手袋をしているのかしら?ふふふ。

 

パンおばさんは、その手紙を大事に箱にしまい、その箱を物置小屋の棚に大事にしまいました。

それからクリスマスのケーキを焼くために台所へ行きました。

あ、そうそうその前に、ポストをちらっとのぞいてね。

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