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あしあとふたつ

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パンおばさんと「風の子のパズル」イラストbyりゅうさん




パンおばさんは、小さな森の丸太小屋にすんでいます。

パンおばさんの小屋から、パンを焼くいいにおいがしてくると、近くの子どもたちがあつまってきます。

パンおばさんの楽しいおはなしを、聞きにくるのです。



ある朝、パンおばさんがせんたくものを干しに丸太小屋を出ると、ドアの前にきらっと光る白いものがおいてありました。

パンおばさんはせんたくかごをそこにおき、白い丸いものをじっと見つめました。

そこへ、朝焼いたパンのいいにおいをかいで、子どもたちがあつまってきました。



「パンおばさん、今日のおはなしなあに?」

「今日はそうねえ、風の子のおはなしをしましょうね。」とパンおばさんがいいました。

「風の子って?」

「ほら、外をふわふわと、あるときはぴゅーっととび回っている風の子どもよ。風の子は、いつも空でパズルをしてあそぶのよ。」




風の子のパズル、それは雲のパズル。

風の子は、ふーっと息をふいて雲を動かし、大きな絵をしあげます。

ある秋の日、風の子はその日も空で雲のパズルをして遊んでいました。

でも、どうしても「ひとかけらたりないよ。」と、絵がしあがらずにこまっていました。




ふと下から、かわいい声が聞こえてきました。

「今日はいいおてんきね。空も雲もきれいね。風もとてもいいきもち。」

風の子が見ると、その女の子はふわふわの白いなにかをかかえていました。

風の子にはそれが、たりない雲のひとかけらに見えました。


風の子は「こんにちは。そのうでの中の雲を、ぼくにちょうだいな。」と女の子に声をかけました。

「こんにちは、風の子さん。あら、これはだめよ。雲ではなくてセーターなのよ。」と女の子はこたえました。

「セーターでもいいよ。どうしてもほしいよ。」と風の子はいいました。

女の子はこまった顔でこたえました。

「ごめんなさい。これはだめなの。だって、たった今お母さんがあみあげてくれたのよ。もうすぐ寒くなったら着ましょうねって。」

「そう。じゃあもういいよ。」と風の子はおこって、びゅうっとつめたい風を女の子にふきつけて、空へ帰っていきました。





その夜、風の子は、ねむっている女の子の家へやってきました。

そしてまどのすきまからこっそり入ると、女の子の白いセーターをもち出してしまいました。



さあ、朝になって女の子が目をさますと、お母さんがあんでくれたセーターがなくなっているのでびっくり。

それはそれは悲しんで、なん日もなん日も泣きつづけ、とうとう女の子は病気になってしまいました。


空では風の子が、女の子の白いセーターをパズルにはめ込んで、雲の絵を完成していました。

「うん、よくできたぞ。」

青い空に白い雲の絵はとてもうつくしくて、風の子は大まんぞくでした。




そこへ、風のうわさがながれてきました。

女の子が大切なものをなくして、かなしくて泣きつづけたと。

そしてとうとう病気になってしまったと。


風の子のこころが、どきんと音をたてました。




すると、さっきまで白くうつくしかった雲の絵はみるみる灰色になり、空をすっぽりおおってしまいました。

やがて雨がふりだしました。

それは、風の子のなみだでした。

「ぼくはなんてことをしてしまったんだ。」

あの子は「きもちのいい風ね。」といってくれたのに。

あの子を泣かせてしまった。

病気になるほど悲しませてしまった。

「ああ、どうしよう。」





風の子は、白いセーターを返しにいこうと決めました。

ところが、白くふわふわだったセーターは、雨でびしょぬれになり黒くよごれてしまっていました。

「どうしよう、こんなになってしまって。あの子はゆるしてくれるかな。元気になってくれるかな。」

風の子は女の子の家のドアの前に、よごれてしまったセーターをおき、ドアをトントンとたたきました。





あれからいく日かがたったさむい冬の日、風の子がひゅーっと空をとんでいると、あの女の子が歩いているのが見えました。

「あの子だ。元気になったんだね。ほんとうによかった。」

ところが、女の子はあのセーターを着ていません。

いいえ、よく見ると、黒くよごれて形もゆがんでいるけれど、あのときのセーターを着ていたのでした。

「ごめんね。いつかきっと、白いセーターをプレゼントするからね。

風の子はそう心の中でいうと、寒い冬にしてはやさしいあたたかい風を女の子にふきました。





「はい、おしまいよ。」とパンおばさんがいいました。

子どものひとりがいいました。

「ねえパンおばさん。風の子はセーターをプレゼントしたかしら?」

パンおばさんは、ほほえみながら「セーターではないけれど、白い雲をつむいだ毛糸をプレゼントしたのよ。」といいました。

「ふーん。じゃあ女の子はきっと、その毛糸でセーターをあんだんでしょうね。」

「そうね、きっと。」

あつまっていた子どもたちは、おいしいパンをいただいて、秋の森へととびだしていきました。





パンおばさんは、「さあ、冬までにセーターをあみましょう。」と毛糸玉を見ました。

それは、今朝ドアの前においてあった、白い雲の丸い毛糸玉でした。





おしまい♪




私の創作童話に、とっても素敵なイラストを付けてくださったのは、美大生のりゅうさんです。
とてもとてもうれしかったです*^^*

イラストにカーソルを置きクリックすると、大きくなりますよ。
もっと素敵なんですよ*^^*
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