忍者ブログ

あしあとふたつ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

パンおばさんと「ほうき星の夜」

冬の夜。

昼間に降り積もった雪が、その結晶を月の光にキラキラさせる冬の夜。

今日のパンおばさんのお話は空の星に住む娘の物語りでした。

お話を聞いた子どもたちは、もう今頃は夢の中・・・・。

................................................................................................................................................

たくさんの星が美しくかがやく冬の夜のことでした。

私はその星たちのひとつに、暮らしていました。

私には広いくらいの家と、私の背丈ぐらいの木が何本もある森、そして私の姿を映すだけの川が、細々とそれでも絶えることなく流れていました。

その星は小さいながらも、私の星でした。

一人ぼっちは少し寂しかったけど、星たちはいつも話しかけ歌いかけてくれました。

ところがある晩、突然、私の住む星がひゅーっと落ちていくのです。

「こんなことは初めてよ。どうしたらいいの?」

遠ざかる星たちが、大丈夫だよと言うようにキラキラとまたたきました。


やがて私の星は、湖らしきところにばっしゃあんと飛び込んでしまいました。

びしょぬれになってそっと辺りを見渡すと、湖の周りにはたくさんの人が集まってきていました。

「まあ、なんて小さいの!」

私は驚いてしまいました。

集まった人々は、みんな私の足首のあたりまでしか背がありませんでしたから。

私の星はどうやら湖にすっぽりとはまっているようで、私が足を伸ばすとすぐに陸に届きました。

私が立ち上がると、みんなが散り散りに隠れてしまいました。

「すみません、教えていただきたいのですが・・・」

「うわ~うわ~」とみんなまた逃げていきます。

「困ったわ。ここはどこかしら、私どうすればいいのかしら」

途方に暮れていると、岩の陰から(岩といっても、私から見れば少し大きな石っころぐらいなんだけど)小さな小さな女の子が私を見上げて言うのです。

「あなたは誰?どうしてここへ来たの?私たちを捕まえに来たの?」

「いいえ、あなたたちを捕まえにだなんて違うわ。私の星がここへ落ちてしまったの。」

それを聞いて、女の子は逃げていった人たちを呼んできました。

そして、寒い夜に私が少しでもあたたまるようにと、それぞれの家からタオルを持ち寄ってくれて、火を焚いてくれました。

「ありがとう」と心から感謝しながら、今度は私が女の子に聞きました。

「ここはどこ?あなたたちはどうして小さいの?ここの人はみんな小さいの?」

「ここは私たち小人族の住む森です。森の外にはあなたのように大きな人がたくさんいるわ。」

「まあ、私ぐらいなの?」

「ええ、でもここへは来ないわ。私たちのことは知らないの。もしも知られたら、捕まえられて見世物にされるんだって。だから私たちは静かに静かに暮らしているのよ。」

「怖いわ。本当にそんなにひどいことをするの?」

「さあ、知らないけど、おじいちゃんやおばあちゃんはそう言うの。昔からの言い伝えみたいなものね。・・・ただ、大きな人たちの連れている大きな犬が時々村を荒らしに来るの。私はそのほうが怖いわ。」

私は自分のような大きな人が、こんなに小さな人たちにそんなひどいことをするのかと思うととても悲しくなりました。

そして大きな犬がこの小さな人たちを困らせているのだと思うと、とてもかわいそうになりました。

そのとき、空をしゅーっと流れ星がひとつ通り過ぎました。

.............................................................................................................................................

流れ星を見て、私はあることを思いつきました。

ここは、私のような人が住む場所。

ここの人たちは小さくて、ここではとても暮らしにくそう。。。

それなら、住む場所を交代したらどうかしら・・・。

「小人族のみなさん、私の星を見てください。あそこには森も川もあります。あそこで暮らしてみることはいかが?そして、私がここで暮らすの。」

村一番のえらいおじいさんが出てきて言いました。

「そうしてもらえるのならとてもうれしいですじゃ。じゃが、この星はあの空へは帰れないのではないじゃろうか?」

「それなら大丈夫です。私は星たちとはお友達ですから、ほうき星さんに頼んでみましょう。ここを通って私の星をひっぱりあげてもらえます、きっと。」

............................................................................................................................................

そういうわけで、私はここに残り、小人族の人たちが私の星へと移り住むことになりました。

住み慣れた星とお別れするのは寂しかったけど、ここには私の背よりも大きな木がたくさんあり、私にはぴったりほどよい感じがしました。

そして私の星に移った小人族の人たちは、そこでは小人ではないようにほどよく見えました。

「ありがとう、娘さん。あなたのことは忘れません。」

「私も小人族のみなさんのことを忘れません。星たちはみな優しいですよ。きっと楽しく暮らせます。」

私は女の子に星たちが歌うことも教えてあげました。

そして私は空のほうき星に向かって、「さあ、小人族の星を連れて行ってあげて。」と声をかけました。

空から輝くほうき星がぐんぐん近づいて、小人族の星をすくい上げて行きました。

去り際に、ほうき星が私にウインクをくれたような気がしました。

私もほうき星にウインクを返し、そしてお別れを言いました。

「さようなら、懐かしい星たち。いつでもここから見上げています。」



ほうき星と小人族の星が行ってしまうと、私は少し不安になりました。

ここに住む大きな人たちは、本当にひどいことをするのかしら。

仲良くなれるかしら。

私は「きっと大丈夫」と、そう信じて森の外れへと一歩踏み出しました。

...............................................................................................................................................

その後、森に残った娘は幸せに暮らしましたとさ。

とおばさんのお話は終わりました。

どんな幸せだったかはおいしいパンだけが知っていること、とパンおばさんが言ったときには、もう子どもたちはパンおばさんが焼いたおいしいパンにかぶりついているところで、もう聞いていませんでした。

そして冬の夜更け、子どもたちは夢の中で、小人族の女の子と星たちの歌を聴いているのでした。

PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

プラグイン

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

最新CM

プロフィール

HN:
性別:
女性
自己紹介:
詩や童話を書くことが好きな主婦です。

アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

フリーエリア